正座ができなくなって考えたこと
私が茶道を始めたのは、20歳でした。最初は、お稽古のたびに大好きなお菓子が食べられるし、お抹茶も好きだし・・・という軽い気持ちで始めました。私の先生は、しっかり修業をされていて、優しいけれど丁寧に教えてくださり、いろいろなことを経験させてくださる先生でした。気楽な気持ちで始めたお稽古でしたが、その奥深さがおもしろく、どんどん引き込まれていきました。
けれども年齢を重ねるごとに、仕事がだんだん忙しくなり、帰宅が遅く土日も仕事があり、自分の時間が思うように作れなくなってしまいました。先生もお年を召されて、怪我をして入院されたり、病気になられたりしました。そして、とうとう天国に帰っていかれました。
友だちが「家に復習しにおいでよ」と声をかけてくれ、しばらく通わせてもらった時期もありましたが、先生との稽古に勝るものはなく、また仕事もどんどん忙しくなってしまったことから、友だちの家での復習も行かなくなってしまいました。そして、あんなに好きだったお茶の世界から、しばらく離れてしまいました。
その間に、私は、けがや年齢が原因で膝の軟骨がなくなってしまい、正座ができなくなってしまいました。茶道は正座で行います。「どうしよう」とずいぶん悩みました。茶道にも、立礼といって椅子に座って行う点前がいくつかあります。けれども、立礼の点前しかできません。「それでは張り合いないなぁ」と思いながら、立礼の点前をしていました。「どうしたら、椅子に座って立礼以外の点前ができるだろう」「風炉はまだできるけど、炉は無理だなぁ」「炭の点前はできないなぁ」など、いろいろ考えました。

そんな時、茶道点前座卓があることを知りました。椅子に座って、いろいろな点前ができることが、とても魅力でした。さっそく作ってもらいました。「これなら私でもできる」とうれしくなりました。年齢を重ねた先輩も、これならお茶のお稽古ができると、稽古を再開してくれています。
伝統文化というと、何が何でも昔からのやり方を守らないといけないと思いがちですが、基本は守りながらも、その人の状況にあわせて、いろいろ工夫したらよいと思います。「もうだめだ」「無理だ」と決めつけてあきらめてしまう前に、「何とかできないかな」と考えることは大切だなぁと思っています。





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